Greenland Science Week参加報告

(写真:Nuukのオーロラ)

D2のSくんがグリーンランドで開催されたGreenland Science Weekの参加報告をしてくれました!


2021年11月9‐15日の間,グリーンランドの首都ヌークに滞在し,Greenland Science Week(GSW)に参加してきました.

この科学イベントは北極域研究者がワークショップや講演などを通じて,研究者のみならず,学生や一般市民までも含めた参加者との交流を図り,グリーンランドと世界の科学者とのネットワークづくりを目的としています.

今年のGSWでは「Making Science Matter」をテーマとし,現状の研究内容や若手研究者の発表とともに,今後のグリーンランド研究での展開について,特に次世代研究者の育成や現地住民との協力,国内外研究者の交流について議論がなされました.研究発表では,グリーンランドの食の権利に関するものから人文社会学,考古学,イッカクなど多岐にわたりました.休憩時間には,研究でお世話になっているイッカクの研究者であるMads Peter Heide-Jørgensen博士とも少しお話しすることができました.

11日にはPublic science talksとして公開研究発表の場が設けられました.私は,Presentations from Next Generation of Researchersというセッションにて,自身のグリーンランドでの研究の取り組みについて紹介しました(写真1).私は,グリーンランドの氷河のあるフィヨルドをアザラシがどのように利用しているのかを研究しています.アザラシと氷山などの物理環境,餌生物の分布の関係性を,双眼鏡を使ったり,安定同位体や環境DNAも用いて取り組んでいます.質疑応答では,特に環境DNAに関する質問が多くあり,みなさんの関心の高さを伺えました.

また,私の研究はArCS II(Arctic Challenge for Sustainability II)の沿岸環境課題(URL: https://www.nipr.ac.jp/arcs2/goals/subject03-03/)と密に連携して進められています.そこで,ArCSⅡブースを設置し,ポスターや資料を用いて取り組みについて解説しました(写真2).海棲哺乳類の研究について,多くの人に興味を持っていただくことができました.また,今後の調査について協力を仰いだり,関心を持つ研究者との交流をすることができました.

 

写真1.Public science talksにて,研究者や一般市民に向けた研究紹介.

 

写真2.ArCSⅡブースを設置し,ポスターや展示物で取り組みを解説.

 

GSW後には,グリーンランド天然資源研究所(Greenland Institute of Natural Resources: GINR)に所属するAqqalu Rosing-Asvid博士とお話しをする機会を得ました.彼はグリーンランドでアザラシの研究者であり,我々の共同研究者でもあります.もともとは今年の夏にグリーンランドへ行き,アザラシに衛星発信器を装着する予定でしたが,コロナのために渡航できず,代わりに彼に発信器を装着してきてもらいました(それについてはArCSⅡ記事があります:https://www.nipr.ac.jp/arcs2/project-report/2021-09-22-1/).これまでは画面越しかメールでしか話したことがありませんでしたが,ついに対面でお話しすることが叶いました(写真3).僕の研究についても非常に強力的であり,様々なご意見やご助言をいただいたうえに,貴重な資料を見させていただきました.また,忙しい中,ヌークのアザラシ解体場も見学させていただきました.

写真3.Aqqalu博士とのツーショット.

 

ヌーク滞在中,私はGINRのゲストハウスに宿泊していました.GSWの会場のある市内からだと徒歩で40分くらいの場所にあります.最初,ここに到着した際に,Aqqalu博士は市内の自宅からここまで毎日歩いて通っている,という話を聞き,私も何度か朝晩と歩きました(ごめんなさい,バスも何度か使いました.現金があればとても便利).気温的には冬の道東くらいの快適な気温で過ごしやすく,夜にはとてもきれいなオーロラも見ることができました.やったね.また,ゲストハウスには海棲哺乳類研究者らも滞在しており,夜にはワイン片手に調査での面白い話も聞くことができました.

今回のグリーンランドへの渡航は,コロナ下ということで非常に厳しい状況ではありましたが,情報収集,研究発表,人的ネットワークの形成を果たすことができ,非常に有意義なものになったと考えています.特に,Aqqalu博士には滞在前から滞在中のサポートと,大変お世話になりました.また,今回の渡航は北極域研究プロジェクト加速(ArCS II)の若手人材海外派遣プログラムより助成いただきました.この場をお借りして感謝申し上げます.

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