【論文採択】秋の北海道沿岸の鯨類の分布

うしお丸

D2のFさんが,先日アクセプトされた論文について紹介してくれました!

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D2のFです.先日,秋の北海道沿岸の鯨類の分布に関する論文が発行されましたので紹介いたします.

Furumaki, S., Shigematsu, S., Iwahara, Y., & Mitani, Y. (2023). Fall distribution and diversity of cetaceans along the southern and eastern coasts of Hokkaido, Japan. Regional Studies in Marine Science, 102913. https://doi.org/10.1016/j.rsma.2023.102913

本研究は北海道大学の練習船うしお丸による2009,2011~2021年9,10月の計21回の目視調査の結果を用い,北海道太平洋根室海峡沿岸で見られた鯨類各種の分布する場所,各種の分布に影響する海洋環境を調べ,それをもとに各種の分布をモデル化しました.以前本ブログでも紹介しましたIwahara et al., (2020)に続く論文です.前の論文よりも襟裳岬以西に解析範囲を広げ,対象種を増やして解析を行いました.

調査では,ハクジラ類7種,ヒゲクジラ類5種の発見がありました.種によって分布する海域は特定の場所に偏っており,分布に影響する海洋環境も異なっていました.太平洋岸では襟裳岬の東西の水温の違いを反映して,東西で分布が異なっていました.また,根室海峡内では南北の海底地形の違いを反映して,南北で分布が異なっていました(図1).研究の詳細は,論文をご覧ください.

図1:発見情報と海洋環境情報をもとに推定された各種の分布.赤に近くなる程,各種の分布可能性が高いことを示す.上段左からナガスクジラ,イワシクジラ,ミンククジラ,イワシクジラ,中段左からツチクジラ・クロツチクジラ,マッコウクジラ,シャチ,コビレゴンドウ,下段左からイシイルカ,カマイルカ,ネズミイルカ.

本研究では,種を限定せず,秋の北海道で見られる鯨類の分布について明らかにしました.しかし,まだまだ疑問は多くあります.例えば,他の季節はどのような分布をしているのか?年を経るごとに海棲哺乳類の分布は変わっていくのか?などです.今後も継続した調査・研究が必要といえるでしょう.

調査に使われたうしお丸二世は,2022年11月に新造の三世に生まれ変わりました.二世での最後の調査が行われた2021年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響で乗船人数が制限されたこともあり,私自身は乗船できなかったことが心残りです.三世には目視調査を行う場所に新たに日よけが設置されたとのこと,ぜひ今度乗ってみたいと思っています.

最後になりますが,本研究は,北海道大学練習船うしお丸の乗組員の皆様や今までの調査に参加してくださった海獣班をはじめとした調査員の皆様の協力なしには行うことができませんでした.皆様に心より御礼申し上げます.

【参考文献】

Yuka Iwahara, Hokuto Shirakawa, Kazushi Miyashita, Yoko Mitani (2020) Spatial niche partitioning among three small cetaceans in the eastern coastal area of Hokkaido, Japan. Marine Ecology Progress Series, 637: 209–223, https://doi.org/10.3354/meps13232

北海道大学練習船うしお丸:https://www2.fish.hokudai.ac.jp/ships/ushio/

 

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