学術研究員の大槻です.
博士課程で行った研究の一部が論文になりました.
Otsuki M, Kohyama K, Goshima W, Kobayashi M, Hasegawa Y, Morita Y, Ijiri S, Mitani Y. 2020 Non-invasive monitoring of faecal testosterone metabolite concentrations in a northern fur seal (Callorhinus ursinus). Japanese Journal of Zoo and Wildlife Medicine 25(1):29-34
動物にストレスを与えずに検体を採取し,ホルモン濃度測定する手法が拡がっています.糞に関しては,動物に一切触れることなく採取できます.そのため,動物にとってストレスフリーです.
キタオットセイの繁殖期を糞中テストステロン代謝物濃度から調べることができるか検討しました.
そのために,飼育下のキタオットセイのオス(図1)を用いて糞中テストステロン代謝物濃度と血清中テストステロン濃度を比較し,非侵襲的なモニタリング方法を確立しました.
実験は,静岡県沼津市の伊豆・三津シーパラダイスで行いました.
図1 実験対象のキタオットセイのオス
採血後,翌朝から3日間,糞を採取しました(図2).
図2 対象個体がプールに排泄した糞を集めました
血清と糞中の濃度を測定した結果,採血の約1日後に採取した糞のテストステロン代謝物濃度と血清中の濃度に有意な相関がみられました.糞中テストステロン代謝物濃度を時系列で比べると,繁殖期に増加することも明らかになりました.
以上より,キタオットセイのオスの繁殖周期を非侵襲的な手法を用いて調べることが可能となりました.
本研究を行うにあたり,伊豆・三津シーパラダイスの海獣飼育担当の方々には大変お世話になりました.お礼申し上げます.