【論文採択】チュクチ海におけるナガスクジラのソングパターン

図1:ナガスクジラの「ソング」


D1の古巻です.

卒業研究の一部がPolar Biology誌で公開されたのでご報告いたします.

Shiho Furumaki, Koki Tsujii, Yoko Mitani. Fin whale (Balaenoptera physalus) song pattern in the southern Chukchi Sea. Polar Biology, 44, 1021–1027 DOI:10.1007/s00300-02

北極海に設置した水中音響記録計で録音されたナガスクジラが出す音(鳴音)を分析し,そのパターンを明らかにした研究です.

ナガスクジラは,非常に低周波で,短いパルス音を持ちます.その中で,パルス音が規則的なパターンで連続しているものを「ソング」と呼びます(図1).ソングは,季節や海域によって構成するパルス音の周波数帯域の大小(図1の縦に長い音と短い音)やパルス音から次のパルス音までの時間が異なるいくつかのパターンがあることが知られています.ソングパターンのちがいについて,①個体は,生涯同じソングパターンを使用し,ソングは個体群に特有のものである②個体はソングパターンを変えることができ,ソングは文化伝達により変化するという2つの仮説があります.この仮説を明らかにするためには,様々な場所,様々な時期のソングパターンを明らかにすることが必要です.北極海もナガスクジラの分布域ですが,ナガスクジラのソングパターンの報告は一例しかありませんでした.

本研究では,2012年から2014年の北極海の入り口にあたるチャクチ海南部で見られるナガスクジラのソングパターンを明らかにしました.結果,チャクチ海南部で2012-2014年に見られたパターンは図1の1パターンのみでした.このパターンは,チャクチ海北部で2007-10年に見られたパターンとは異なっていましたが,同時期の2012-2014年に見られたパターンとは同一のものであったことがわかりました.これは,この海域で数年のうちに,ナガスクジラの①来遊する個体群が別のものになったこと②来遊する個体群が別のソングパターンを学習し,ソングパターンを変えたことのいずれかを示唆しています.また,北極海全体には同一のソングパターンを持つ1つの個体群が来遊している可能性が示唆されました.

詳しくは論文をご覧ください.

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