写真1.ガリンコ号Ⅱ.雪がひどかったので,車内からパシャリ…(櫻木撮影).
D1の櫻木です.
2021年3月8日にガリンコ号Ⅱ(写真1)に乗船し,紋別沖にて海棲哺乳類の目視調査を実施しました.
冬期の北海道東部オホーツク海沿岸域には,ロシアのシベリア沿岸で生成された海氷が流れてきます(流氷).流氷の存在は海洋生態系にとってとても重要なものです.例えば,流氷の下部で増殖する微細藻類(アイスアルジー)は動物プランクトンの餌となり,海洋生態系の主要な生産者となります.また,我々の研究対象でもあるゴマフアザラシなどのアザラシ達は,流氷を繁殖や休憩の場として利用するため重要です.
本調査では,そうした海洋生態系で重要な流氷のあるところまで目視をしながら船で移動し,海棲哺乳類の分布を調べました.
それでは,ガリンコ号出港です!流氷のあるところを目指して,どんどん前進します(写真2).この日,流氷は沿岸から20 km近くの沖合にあり,なかなかその白い姿を見つけることができません.
写真2.目視中の風景.なかなか海氷のあるところまでたどり着かない(櫻木撮影).
船を走らせること約1時間,外での目視のため,冷たい風で体力が奪われつつある中,ついに流氷域に到達しました(写真3).ガリンコ号はガリガリ流氷を砕き,前進します.
写真3.ガリガリ流氷を砕いて前進するガリンコ号Ⅱ(櫻木撮影).
そして,遠くの流氷上には,休んでいるゴマフアザラシを発見できました(写真4).
写真4.遠くの流氷上で休息するゴマフアザラシ(三谷撮影).
さらになんと,流氷の合間を縫って泳ぐトドも発見できました(写真5).
写真5.流氷の合間を縫って泳ぐトド(櫻木撮影).
最終的に,ゴマフアザラシ2頭,トド1頭の計3頭の鰭脚類の発見があり,そのすべてが流氷域での発見でした.
本調査では,北海道大学低温研究所の大島先生・西岡先生らのチームの調査も同時に実施されました.彼らは海氷や海水のサンプリング,CTDで水温・塩分の測定等もしていました.こうした海洋物理学的な研究成果も合わせていくことで,流氷が生み出す海洋生態系の仕組みが解明されていけばと思います.
(おまけ)
調査後,ガリンコ号出港場所近くにあるとっかりセンターにも訪問しました(写真6).
調査中も調査後もアザラシを見ることができ,アザラシ三昧な調査となりました.
写真6.とっかりセンターで飼育されているゴマフアザラシ.飼育員は口の中の様子を見て,健康状態を確認する.