9月根室ラッコ調査報告

M2のKさんが,根室で行ったラッコ調査について報告してくれました!

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2023年9月1日〜15日に、北海道東部根室市沖合の島で、ラッコの生態調査を行いました。

今回の調査では、潜水士さんによる本海域の底生生物の調査と、目視によるラッコセンサスおよび採餌行動の観察、ドローンによる藻場の空撮、GoProによる海中からの藻場撮影などを行いました。

船上からのドローン操縦の様子

底生生物調査では、よくラッコが採餌しているのを目撃するエリア周辺に、200m×200mのステーションを22ヶ所設定し、各ステーション内で50cm×50cmのコドラートを用い、その中にいる底生生物をカウントします。

私たちが潜るには難しいので、昨年に引き続き潜水士さんにお願いしている潜水調査です。

潜水士さんに、コドラート内に収まる底生生物を全て(カニを除く)網に入れ、船上に持ってきていただき、私たちは種類や大きさを測ってziplockに入れて冷凍し持ち帰ります。

研究室に戻った後に大きさ等を測って解析をします。今年度は昨年度と比較して、ウニの数が増えていたようですが、ウニが見つかったステーション数は多くないようでした。

潜水士さんに潜っていただくのは海況が良い日に限られてきます。そのため、全ステーションを回るには条件が良くても4-5日かかりますが、船長さんと潜水士さんの話し合いにより効率よく回ることができ、今年度もほとんどのステーションを4日間で回ることができました。

海底でのコドラート写真

 

潜水調査後は、センサスとラッコの採餌行動の観察をメインに行います。

私が1番好きな調査であるセンサスでは、一定速度で航行し、みんなでキョロキョロしながらラッコを探します。

ラッコ行動、仔の有無、自分たちがいる位置のGPS、ラッコの目測の位置、等を記録しながら、島を8の字に周り、その日にみえるラッコの全頭数をカウントします。なるべく船に気づかないうちに発見し、ラッコの場所と行動を記録したいため、船の行き先を重点に探すことが多いのですが、なんかツルツルしたラッコだ!と思うとアザラシだったり、動かないな?と思ったら岩だったりと、そう簡単ではありません。

それでも何日も同ルートを周っていると、先月は島の南東にたくさんいたのに、今月は西側の湾内でよくみるな〜という発見や、今日もあの大きな岩の横に1匹ずっといるな〜、縄張りをもったオスなのかな?という発見があります。

毎月違う発見や同じ傾向が見られるのがおもしろく、今はその要因に関する解析を行っています。

よくこの岩付近で見られたラッコ.岩にあがろうとしているラッコを見かけることは多くない

 

また採餌行動の調査では、餌を食べているラッコを見つけ、どのくらいの大きさの何を何個食べているのかを、双眼鏡を覗きながら目視調査します。

大きさはラッコ手を基準に、手と同じくらいの場合は小、手2個分を中、手3個分より大きい場合は大、としています。

大の二枚貝などはわかりやすいですが、小の場合には二枚貝なのか、巻貝なのか、あるいは違うものなのか、、、。難しいときがあります。

またラッコは5、6個の餌を持ってきて、水面で1、2個食べると横にぐるんと横一回転することがあります。そうすると食べかけの物を食べているのか、新しい物を食べているのかまた判断が難しく、この調査には慣れと経験が必要で、いつも先生や船長さんの意見を参考に調査しています。

採餌中のラッコ

 

今回の調査で印象的だったのは、死亡しているとみられる仔ラッコを、親ラッコが何日も抱えている場面を目撃したことです。

文献では仔ラッコの生存率は25%ほどと書かれており、野生個体が死亡するのはそんなに珍しいことではないと考えられますが、実際に目撃したのが初めてだったため少し悲しい気持ちになってしまいました。

親子のその後を追うことはできませんでしたが、今後道東でラッコが増えていくと、衰弱した個体の目撃等も増加することが推測できます。

アラスカなどでは親からはぐれた仔ラッコを、人間が保護し、代理母ラッコが育て、野生に返す活動体制ができていますが、日本では今はありません。

野生個体の保護が必要なのか、ということや、保護するべきなのか、ということなどについて、研究者だけではなくて、様々な立場の人と考える場が必要になってくるのではないかと感じました。

今回の調査には、国内外の学生や、各地水族館の飼育員さんが乗船してくださり、私自身、飼育動物および野生動物との関わり方について考えるきっかけとなりました。ありがとうございました。

私は今年度で卒業なのでラッコ調査は最後になると思いますが、海棲哺乳類の中でも鯨類や鰭脚類といった水中にいる時間が長い種と比較して、水面にいる時間が長くたくさん目視できるラッコ調査は、個人的に自分に合っているな〜と思っていて、楽しかったです。

お世話になった皆様、ありがとうございました。

休息中のラッコ

 

 

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