2019年10月19日に京都大学霊長類研究所にて第三回犬山鯨類鰭脚類行動シンポジウム(CetaPin3)が開催されました.今回発表したM1のOさんが報告を書いてくれました!
今回のCetaPinは私にとって初めての学会でした. シンポジウムでは「飼育個体におけるゼニガタアザラシの視覚的認知に関する研究」について発表させていただきました. 現在, 青森県の浅虫水族館で行っている実験についてです.
ゼニガタアザラシをはじめとした鰭脚類の認知に関する研究は, 鯨類などの他の海棲哺乳類と比較しても乏しく, 明らかになっていない点が数多く存在します. 近年問題となっている鰭脚類による漁業被害対策においても, 彼らの認知を理解することが重要と考えられています. さらに, 鯨類で行われている数多くの認知実験の結果と比較して, 水中で生活している鯨類と水陸両棲の鰭脚類にどのような違いがあるのかを調べることは, 進化を理解する上でもとても興味深い分野と言えます.
ほかにも, 鳴音や採餌行動など, 野生個体の生態に関するものから, 飼育個体を対象にしたトレーニング, 認知実験に関する発表など内容盛り沢山のシンポジウムでしたが特に印象に残っているのが, 御蔵島でおこなわれている, 野生のハンドウイルカの採餌行動の調査に関する報告です. 実際に観察撮影された映像をたくさん見ることができて, 水族館では普段見ることができない野生ならではの力強さを感じました. 映像データの収集も, 自身で撮影したものだけでなく, 観光で訪れた一般の方もインターネットを通してデータを投稿できるシステムを活用したという点もとても興味深かったです. データの正確性といった問題は考慮しなければなりませんが, 鳥類に関する研究データの半数近くが野鳥の会で集められてデータであるように, 一般の方にとって研究や動物が身近であることは重要な要素であるように思います.
さらに, シンポジウムの最後の発表が「ダイバーの認知」に関する発表で, 私自身ダイバーなので聞いていてとても興味深かったです.
シンポジウム後に行われた懇親会でも, 互いの研究内容を紹介しあったり, 興味がある分野や今後やってみたい分野についてアドバイスを求めたりなど, とても有意義な時間となりました. 今後もたくさんの学会に参加して, 研究者の方からたくさんの知識, 刺激をもらいたいと思います.