4.オットセイの摂餌生態と漁業との競合
オットセイの餌
餌は,胃内容物分析や糞内容物分析で調べられています.その結果,日和見捕食者(Kajimura 1984)で,生息環境中に多い,あるいは利用しやすい餌を食べていること,餌は繁殖地間,越冬海域間で異なることが明らかとなっています.また,長期的な魚種交代にも対応して変化しています(Yonezaki et al. 2008).
1960年代 | 1970年代 | 1980年代 | |
日本周辺での主な漁獲物 | タラ科,スルメイカ | マサバ | マイワシ |
胃内容物中の主な餌生物 | タラ科,ハダカイワシ科 | サバ科 | マイワシ,ハダカイワシ科 |
オットセイの潜水
オットセイの最大潜水深度と時間は以下の通り.
性別 | 場所 | 平均潜水深度(最大) | 平均潜水時間(最大) | 引用文献 |
成熟メス | ロブシュキ島(オホーツク海) | 18.1 ± 2.2 m (102.5 m) | 0.7 ± 0.1分 (6.7分) | Waite (2010) |
プリビロフ諸島(ベーリング海) | 68 ± 53 m (207 m) | 2.2 ± 1.4分 (7.6分) | Gentry et al. (1986) | |
未成熟オス | セントポール島(ベーリング海) | 17.5 ± 1.5 m (175 m) | 1.2 ± 0.1分 (9.9分) | Sterling & Ream (2004) |
オットセイと漁業
©堀本
北海道日本海沿岸では,キタオットセイによる漁業被害が起きているという報告があり,我々は2008年から調査を開始しました.すると,写真のように網からホッケを食べているキタオットセイが観察されました.オットセイは外洋性で日和見捕食者であることから,沿岸の漁場で楽に食べられると学習した個体が,漁業と競合しているという可能性があります.
オットセイと法律
オットセイは,同じく乱獲されたラッコとともに,臘虎膃肭獣猟獲取締法という法律(1912年制定)によって管理されています.この法律によって,学術捕獲を除く捕獲や所持が禁止されています.現在は,北海道沿岸における漁業被害軽減のため,生態を把握するための調査が行われています.