オットセイってどんな動物?

2.オットセイの分布と生活史

オットセイの分布域(水色)と繁殖地

オットセイは太平洋北部,ベーリング海,オホーツク海に広く分布します.島を繁殖場として,夏と秋に上陸し,繁殖,換毛を行います.オットセイは外洋性であり,冬から春にかけて南下回遊を行い,その間のほとんどの時間を海で過ごします.この回遊期に日本までやってきます.

オットセイの繁殖

オットセイのハーレム

いちばん大きいハーレムブル(真ん中)とその周辺にいるメス.黒くて小さいのがその年生まれの子ども(パップ).

オスの闘い

繁殖システムは、1頭のオスが20頭以上のメスとその子どもと集団を作る一夫多妻性です.オスがハーレムを持つためには、体を大きくして他のオスに勝たねばならないため、8〜10歳になるまで子を残すことができません.この年齢を社会的成熟と呼びます. 5月下旬になると,まず成熟オスが繁殖地に帰ってきて,テリトリーを確立します.オスは繁殖期間中,ハーレムを維持するために飲まず食わずで他のオスと闘います. この間,オスの体重は一日で1.2kgずつ減少します.

オットセイの子育て

成熟メスは6月末から7月半ばに繁殖場に上陸し,上陸後1-2日後に1頭の子どもを出産します.母親は出産後,子どもと過ごして授乳しますが,5日後くらいに交尾を行い,その後また1-2日たつと,数日間から1週間程度の採餌トリップに出かけます.

その間,残された子どもたちは,固まって母親の帰りを待ちます.

11月中頃になると離乳し,換毛も行われた後,餌を食べて次の繁殖に備えるための回遊が始まります.メスの妊娠率は6~17歳で高くなっています(Lander, 1981).

オットセイの回遊

日本への回遊経路は、外洋捕獲に出ていた猟船の位置から、1〜3月には房総半島沖から三陸沖に分布し、4〜5月に三陸沖から北海道太平洋沿岸へと北上し、繁殖地へと帰っていくと推測されてきました。また前ヒレに装着したタグから、日本近海に来遊する本種の由来はサハリンのチュレニー島、千島列島、そしてコマンダー諸島であり、その組成は2:1:1であることが明らかとなっています(清田・馬場, 1999).

オットセイの海での休息

オットセイはイルカ類と同じように半球睡眠(左脳と右脳を交互に休ませること)ができます.半球睡眠をしているときは,写真のように左右の後ヒレの間に片方の前ヒレを挟んで浮かんでおり,タイヤが浮かんでいるように見えます.海外では,この姿勢をJug Handle(=水差しの取っ手)と呼んでいます.この時,もう片方の前ヒレで水をかいています.

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