【論文採択】クロミンククジラの食性研究(ヒゲ板を用いた採餌履歴の推定)

アラムナイ(2016-2018在籍)の鈴木一平です。

北海道大学と(一財)日本鯨類研究所の共同研究がPolar Biology誌に掲載されました。

 

https://link.springer.com/article/10.1007/s00300-021-02816-5

 

Estimation of the feeding record of pregnant Antarctic minke whales (Balaenoptera bonaerensis) using carbon and nitrogen stable isotope analysis of baleen plates

Mayuka Uchida, Ippei Suzuki, Keizo Ito, Mayumi Ishizuka, Yoshinori Ikenaka, Shouta M.M. Nakayama,Tsutomu Tamura, Kenji Konishi, Takeharu Bando, Yoko Mitani

 

クロミンククジラを対象とした安定同位体比分析による食性に関する研究です。

夏季の高緯度域での採餌後、出産のために低緯度域に移動するとされているクロミンククジラですが、

高緯度域から低緯度域を経て、再び高緯度域に戻るまでの食性は謎に包まれていました。

 

ヒゲクジラのヒゲ板には、生成時に食べていた餌生物を構成する成分が

数年単位で記録されていることが過去の研究から分かっています。

 

中学理科や高校化学などで元素記号の周期表を覚えたことがある人が多いと思いますが、

陽子数(原子番号)が一緒でも異なる質量(中性子数)を持ちながら

安定な状態で存在している元素(安定同位体)が自然界にはあります。

生息海域や栄養段階によって異なる成分として炭素と窒素の安定同位体の比率変動を利用し、

南北回遊中の彼らの採餌履歴を復元することで、その間に何を食べていたのかを検証しました。

 

2015/2016の南極海での調査捕鯨によって得られた妊娠雌(10個体)のヒゲ板から

10mm間隔で各安定同位体の変動を調べた結果、ヒゲ板を構成する約80%の成分は

南北回遊中であっても南極海に生息するナンキョクオキアミであることが判明しました。

 

大西洋のナガスクジラを対象とした研究で、絶食した際に見られる窒素安定同位体比の減少傾向は

今回の結果では見られなかったので、クロミンククジラは完全に絶食をしてはいないことが示唆され、

ヒゲ板の成分に反映されるだけの豊富な餌生物を回遊中には捕食していないことが分かりました。

 

詳細は、原著論文にてご確認ください。

関連記事

PAGE TOP